見られないけど偉い酒

僕は川崎駅によく出没する。おばあちゃんが生前住んでいたこともあって馴染みの深い土地だ。

今日は興味ある映画はやっていなかったので作業と買い物を目的に電車を降りた。

時間は午後2時。お昼は少し過ぎていてお腹がすいてきたので地下一階のフードコートへとお気に入りのスタンスミスと進んでいった。

最近食道の調子がわるい。飲み込むときに胃から上がってくるような気がする。油っぽいものばかり食べていたツケでしょうか、、、。

あげもの食べたかったけれど今日はガマンしよう。目に入ったのはお茶漬けのお店。海鮮丼や豚丼、ウナギ丼にダシをかけてお茶漬けにするのか。のどに刺激を与えなそうだ。ここにしよう。まあ、お茶漬けにはせずダシのまま飲むのですがね。

選ばれたのはサーモンといくらとアボカドの海鮮丼。トレーの上に丼をのせてカウンターの席についた。

木曜日の昼間なのでフードコート内はそこまで混雑していなかったので、席を2つ使わせてもらい荷物を置いて食べ始めた。

すると荷物を置いたとなりの席におじさんが一人すわってきた。くそっ。ゆうゆう食べるのが好きなのに!こんなに席あいてるからもっと広いところにすわればよいじゃない?

まあ荷物は介してるしそんなに近いわけでもないから気にせず食べていたら、

プシュっ

と、缶の中の二酸化炭素が空気を吸った音がした。え、この人、フードコートで酒のむん?と思い僕にしてはめずらしく横のおじさんの方へ首を動かしてしまった。

おじさんは、おそらくケンタッキーで買ったであろう大きなチキン一個をトレーにのせていた。問題の500mm缶にはタオルのようなハンカチのような布をまきつけていた。家からわざわざ持ってきたんかな!?ぬるくなるし炭酸なくなっちゃうのではー?

そんなことを考える僕の視線は気にもとめておらず、自分のリラックスした体勢と表情を浮かべたおじさんは、一人なのに缶ビールを持ち上げ、乾杯、をした。

この風景を見た僕はおじさんにいたく感動した。一人でも乾杯するんだ!!

おじさんにとってはなんて事のないただのルーティーンなのかもしれない。この一挙手一投足になんの思考もかよっていないかもしれない。だが、そんなことを知らない僕にとっては、たとえ分かち合う人がいなかったとしても、一杯のビールに感謝をもって乾杯をするというおじさんの行為がとても愛おしく思えた。きゅん。

さっきは心の中で文句言ってごめんよ。僕はあなたみたいな人になりたいです。

おじさんの顔はなんの緊張もなく、ただただリラックスした表情で目の前を見つめていた。

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